新人くん、大阪で人生の修行をするの巻(“場”のことを考えるようになった、あの頃の話。)


ボクはいま、「場」について考える仕事をしている。

暮らしの場、働く場、学びの場、出会いの場――

そこに人が集まる理由や、空気のつくり方、気配の変化に興味がある。

だけど、もともとそんな視点を持っていたわけじゃない。

この仕事を選んだとき、正直なところ「建物って、かっこいいよね」くらいの気持ちだったと思う。


この小さな6つの物語は、そんなボクが、

「場所」にある人の気持ちや、

「建物」に宿る生活の時間や、

「空間」ににじむ記憶のようなものに、

少しずつ気づかされていった“あの頃の記録だ。


舞台は大阪。

新卒で配属された街で、右も左もわからず、

お菓子の袋に5000万円を詰めて電車に乗り、

未払いのビルを守って寝袋で夜を明かし、

バーベルを持ち上げないと話を聞いてもらえず、

理想を詰め込んだ家づくりは50億円の赤字になった。


トラブルの嵐のような日々だったけれど、

あの現場の、あの人の、あの空気が、

今の僕の“場づくり”の原点になっている。


その場所にいる人たちの顔や、

交わされる言葉のトーンや、

思ってもみなかった生活の背景。


そんなものに何度もハッとさせられて、

“正しさ”より“らしさ”を大切にしたくなった。

“つくる”より“育てる”に、気持ちが向かうようになった。


この物語は、サカキラボのはじまりではなく、

たぶん、サカキという個人が「場」に目を向け始めた瞬間の記録です。


あの頃の僕に、今の僕は言いたい。

「しんどかったけど、ちゃんと見てたな」って。

そして、いま場所に悩んでいる誰かに伝えたい。

「なんでもない場所も、人がいれば、思い出になる」

「トラブルの多い現場のほうが、あとからいとおしくなる」

そんなことを、ちょっとだけ信じられるようになった、

あの大阪時代の話です。


「新人くん、大阪で人生の修行をするの巻」

ここから、はじまり、はじまり。

その1「お菓子の袋に5000万円」

その2「完成間近のビル、ボクが最初のテナントでした」