引き算の美学|あさば(修善寺)

確かにこれは外国人が喜ぶわけだ!と一人納得してしまいました。自然だけでなく、建築もあるから、両者が引き立つんだなぁと実感。部屋から見えるのは山と池と能舞台だけです。また部屋もとてもシンプル。なにもない。置くものも吟味して余分なものを一つ一つ取り除いていった引き算の美学を感じます。なんだか自分の普段の生活が「妥協」と「中途半端な物欲」で囲まれているかのようです。まぁ、今日一日はそれを忘れて美に没入しましょう。


サカキ(デザイナー):やっぱり能舞台が美しい。これがあるからまた山と池が映えるね。

ユキ(心理学者):そう、人工物があると自然との対比になって。

サカキ:この池や木々も造園しているのだろうけど、海外の庭のような「つくりました!」という感じがなくていいね。

ユキ:修善寺は川に面した開放感のある宿が多い中で、山側に池を作って囲まれた独自の景観を作るのは他にはないよね。落ち着くなぁ。きっと何もないシンプルさがいいのかもね。

サカキ:そう、飾るのも自然のものを使って。なんだかぼーっとしちゃうね。

ユキ:リゾートの天気がよくて海が空が青いー!っていうのもいいけれど、ここだと天気でも雨が降ってもいい感じだね。気持ちが外に向くのではなく、内側に向く。

サカキ:なるほどー、改めて自分の物欲を感じてしまったのも、そういう訳か...。家に帰ったら断捨離だ!

椅子の高さもやや低めで、それがゆったりできます。よくこんな崖地を素晴らしい旅館にしたなぁと感動してしまいます。もっと大きな旅館かと思っていたら、意外とこじんまりしていて、行き届いている感じがします。ここで缶詰にしてもらえたら、いい小説がかけそうです。修善寺というとちょっと陰気なイメージがありました。陽気な東伊豆に夕陽の西伊豆に挟まれて、ちょっと世間から離れた感じで。そんな勝手なイメージがあったのでなかなか行かなかった場所でした。実際来てみると、陰気な感じはないのですが、ちょっと世の中から離れて隠れた感じがするのはなぜでしょうか。

ふっくらした座布団に座ってお茶を飲みます。一応テレビもあるのですが、戸棚にしまってあります。食事は朝晩ともに部屋出しです。

エントランスののれんがカワイイです。のれんをくぐるとすぐに池が広がります。

結婚式は手前の舟で能舞台にゆらゆら揺られて行くそうです。夜は灯籠と能舞台に灯りがついて幻想的になります。

鯉の餌も置いてあります。人面魚みたいな立派な鯉がウヨウヨいます。
ロビーでのんびりするのも気持ち良いです。しっかりとメンテナンスされています。

池に面した露天風呂です。早い時間に入ると気分がリフレッシュ。さぁビールの時間だ!

夜の献立です。
とうもろこしも軽いかき揚げとすり流しでスタートです。ちょっとつまみながら日本酒も進みます。
蟹の煮凝りなど日本酒に合う一品が続きます。
お造りに穴子のお寿司。塩でもいただきます。
若鮎です。綺麗な水を泳いで藻を食べていたんだろうなーという想像が湧きます。カゴに入った炭火もいい趣です。
夜の蛍を眺めに行っている間にお布団が引かれています。ふかふか。

おはようございます。朝ごはんも美味しいです。

部屋にかかっている掛け軸もカワイイです。ピシッとした中にカワイイものがあると引き立ちますね。また頭が飽和状態になったら、ゆっくりと来たいものです。

(写真と文:サカキテツ朗)