舟と景色と|星のや京都(京都市)

部屋からの青紅葉がきれい。


ようやく星のや京都にたどりつきました。コロナの影響で移動ができず、リスケ続きでした。星のや京都の良さは「アプローチの舟」と「窓からの眺め」に尽きるかもしれません。よくこんな場所にホテルができたなぁというような立地。ちょっとしたおこもりさんの気分です。渡月橋のたもとに待合があり、そこで時間まで待って舟に乗ります。よく見ると舟はモーターボートなのだけど、風情を壊さないような外観でよくできています。バンコクのマンダリンオリエンタルホテルみたいにスパに行くときにチャオプラヤー川を横切るなんちゃってな感じと思っていたら、しっかり上流の方に進んでいきます。


サカキ(デザイナー):いやぁ、癒されるね。

ユキ(心理学者):やっぱり舟でホテルまで行くというアプローチがすごいね。5分くらいだったらそこまでではないけれど、15分くらい乗ると気分も切り替わるね。

サカキ:車じゃなくて舟だけっていうのがいいね。

ユキ:自然と気持ちが内省モードに切り替わって、「ここで何かしよう!」というよりも自分を見つめるいい機会になるね。そういう意味でホテルのプログラムである写経、お香、野点や朝のヨガなんてマインドフルネスアイテムはよかったな。

サカキ:まぁ1日はいいけれど、2日滞在はちょっと飽きちゃうなぁ。

ユキ:もっと自分を見つめないと!

サカキ:しかしロケーションといい、ホテルまでのアプローチの舟といい、星のやの作り方は「絶対的なハード」があるような気がするなぁ。

ユキ:絶対的なハード?

サカキ:そう、人やソフトによるものではなく、他のホテルにはないというもの。今回の緑と川しか見えないロケーションなんて他の京都のホテルには絶対ないものね。

ユキ:そうかー。そういえば東京大手町の星のやもそうだったね。外観は近代的なビルなのに、1階のエントランスで靴を脱ぐ。部屋だけでなく、廊下も畳だったね。エレベータの中まで畳というのはビックリ。

サカキ:「えー!」びっくりとスタッフの人に聞いたら、「うちは旅館ですから」とさらっと答えてくれて「なるほどー」って感心したね。それぞれの施設にこういう「絶対的ハード」があるっていうのが星のやのすごいところかもしれない。

ユキ:確かにそうかも。でもこの京都では舟を乗るのを待つのにコロナの影響もあってか30分くらいぼーって待たないといけなかったな。

サカキ:その待つ時間よりも舟体験を重視したんだろうね。とはいえ、待っている間にもう少しワクワクがあってもいいかもしれないけれど。

ユキ:ワクワクってお茶じゃなくてシャンパンとか?

サカキ:もうそれがあるだけで、大満足だな!

しだいに嵐山の雑踏を離れ、奥の方へと進んでゆきます。意外と川底は浅いようで、船頭さんは慎重に舟を操ります。

夜の食事はこちらで、ダイイング棟。手前右には池があって、水の音が心地よい。


星のや以外に川と緑しかないというロケーション。よくこんなところにホテルをつくれたなぁという場所です。中は宿坊のような建物が川沿いにいくつもあります。

高野山の宿坊みたいな建物。修行にきたみたいな気分に。


フロント棟のところでお茶を飲みながらチェックインをすませて、部屋に行きます。全部で25室あります。


意外とモダン


部屋は窓に向かってソファっぽくなっている場所にベッド。床が黒の板張りで、畳スペースがないのが意外な感じ。ますます宿坊感あふれる。これから写経でもしようかなっていう気になってくるから不思議だなぁ。


ここでぼーっと緑を眺める。ときおりトロッコ列車が見えます。


レターセット(無料)やお菓子(有料)


部屋にCDがあるってちょっと古いなぁと思ったものの、ついつい聞いてしまう。「サマー」というCDと邦楽っぽい感じのもの。ゆったりした音楽で催眠術にかかりそう...。今のホテルは自分の音源をブルートゥースで接続するのが主流だから、ホテルセレクションというCDもいいかもね。

シンプルな洗面台。桶の中にアナログな温度計が。

部屋のわりにゆったりとしたトイレと洗面台とお風呂が一部屋になったバスルーム。


お風呂は意外と深くて、中に椅子がある。


檜のお風呂につかりながらまったり。ただお風呂のブラインドと外の格子がちょっと牢屋っぽいかも。世俗から解脱するにはよいかも。

こちらはラゲッジスペース

写経や野点セットが用意されている。

夜はあかりがきれい。

夜ご飯がスタートします。ダイニング棟のカウンター席だったのですが、コロナで透明なしきりがある上、カウンター内は食事をセットするだけの場所になっていて、ちょっと残念です。

八寸。押し寿司(左上) マスカットとムール貝の梨霙和え(右上) 菊花白和え(中央) 丸いちょう(左中央) 鱒博多(左下) 鴨のパテドカンパーニュ(右した)

カツオの変わりお造り

ハモ蒸し物のお碗

甘鯛のオランダ焼き

牛フィレ炭火焼きと旬の野菜 器が素敵

締めのうなぎ飯。昼もうなぎだったので、またうれしい。

デザート イチジクのテリーヌ。

朝食は野菜鍋です。お部屋までスタッフがえっほらえっほらと運んでくれます。夜は窓からの景色がないけれど、朝は緑を見ながらの朝食が気持ちいいです。真下では朝のヨガクラスが。呼吸するだけでよい気がもらえそうです。


(写真と文:サカキテツ朗)